耳の奥にある鼓膜のさらに奥に中耳という空洞があり、そこに何らかの炎症性病変がある状態を中耳炎といいますが、一口に中耳炎といっても急性中耳炎、慢性中耳炎、滲出性中耳炎、真珠腫性中耳炎、癒着性中耳炎など多くの病名があり、それぞれ密接な関係を持ちながら違った病態を示します。
その中でも日常的に多くみられるのは、急性中耳炎、慢性中耳炎、滲出性中耳炎です。
中耳と鼻の奥をつなぐ耳管(じかん)という管があります。鼻やのどで細菌やウィルスが繁殖し炎症を起こして、それが耳管を通って中耳に広がり、急性の炎症を起こした状態が急性中耳炎です。
一般に、単に“中耳炎"といった場合はこの急性中耳炎を指すことが多いようです。
症状は突然起こる耳の痛みが最も多く、特に鼻の状態が悪いとき(かぜ、副鼻腔炎など)に起こりやすいです。小さいお子さんでは機嫌が悪い、耳をよくさわることがサインになります。耳だれで気付かれることもあります。
耳の中を診ると、中耳に膿がたまり鼓膜は赤く腫れています。鼓膜が自然に破れると膿が出てくる(耳だれ)ので、細菌を調べる検査をします。
治療は、まず適切な抗生物質で細菌をやっつけます。鼻やのどの治療も同時にする必要があります。炎症の程度がひどい時は、鼓膜を切開して膿を出す必要があります。
多くの場合は数日で症状が良くなりますが、中途半端な状態で放置すると後述の滲出性中耳炎に移行してしまうこともありますので、鼓膜の状態がきれいになったかを耳鼻科で確認する必要があります。
近年の抗生物質の乱用によって抗生物質が効かない細菌が増えており、この場合治療が難しくなります。強い抗生物質をむやみに長期間飲み続けるのは避けるべきです。抗生物質の投与期間を最小限にするためにも薬だけでなく、処置(鼓膜切開や鼻汁吸引)が大切な治療になってきます。
痛みや発熱が強い場合は入浴を控えましょう。シャワーのみならOK!です。
中耳の炎症が長期間続き慢性化したものを主に慢性中耳炎といいますが、炎症は治まっていても過去の中耳炎の影響で鼓膜に穴が開いたままになっている状態も慢性中耳炎に含まれます。
慢性の炎症があれば頑固な耳だれがみられますので、耳の処置や抗生物質の投与などによって炎症を抑える治療が必要です。鼓膜の穴だけであれば特に自覚症状はないかあっても軽度の難聴が多いです。鼓膜の穴を塞ぐということになれば多くの場合手術が必要ですが、手術を受けるかどうかは耳鼻咽喉科の専門医によく相談して決めるべきです。
慢性中耳炎の患者さまは、耳の中に水を入れないように気を付けないといけません。入浴や水泳の際は必ず耳栓を使用してください。
中耳と鼻の奥をつなぐ耳管の役割は中耳の換気排泄です。つまり、新鮮な空気を中耳に取り込み、不要なもの(液体など)を鼻の方へ流すことです。
この機能がうまく作用しなくなると、中耳に空気が少なくなって鼓膜がへっこみ(風船がしぼむように)、中耳に水(滲出液)が溜まることによって、聴こえが悪くなったり、耳が塞がった感じがします。これが滲出性中耳炎です。
この病気の原因は耳管の機能が悪くなることで、特に耳管が開きにくくなることが関係します。子供は元々耳管の機能が悪いため、滲出性中耳炎になりやすい状態です。
また、鼻に炎症(かぜ、アレルギー、副鼻腔炎など)があり鼻の粘膜が腫れると耳管の粘膜も腫れて耳管の開きがさらに悪くなります。アデノイドが大きいと耳管を塞いでしまうので悪影響を及ぼします。
耳の中を診ると、鼓膜は奥にへこんでいたり、鼓膜の奥に水(滲出液)が溜まっていることから診断できます。鼓膜の動きを調べる検査(ティンパノグラム)や聴力検査の結果も診断の助けになります。
鼻が悪い場合はその治療が第一です。それだけで自然に治ることもありますが、なかなか治らないようなら鼻から中耳に空気を通す処置(耳管通気)を続けていく必要があります。それでもなかなか治りにくい場合、鼓膜切開や鼓膜にチューブを入れる処置が必要になります。
10歳位になると耳管の機能が良くなって自然に治っていくことが多い病気ですが、それまでの間を悪い状態で放置すると、癒着性中耳炎や真珠腫性中耳炎などのやっかいな病気に移行してしまうこともありますので、適切な治療が必要です。
やまだ耳鼻咽喉科 アレルギー性鼻炎・中耳炎・副鼻腔炎
〒547-0021 大阪市平野区喜連東2丁目1-48 TEL.06-4302-3387